迷うのは、ごく自然なこと
体外受精へのステップアップを勧められたとき、すぐに前向きになれないのは決して珍しいことではありません。多くの人が、不安や戸惑いを抱えながら治療の段階を進めています。
十分な情報がないまま、「自分で決めてください」と言われれば、迷うのは当然です。大切なのは、焦って答えを出すことではなく、自分なりに納得して次の方向性を決めることです。
まずは、なぜ気持ちが追いつかないのか、その理由を考えてみましょう。深く考えず、思い浮かんだことを紙に書き出してみてください。「こんなことを考えるなんて……」と否定せず、思うがままに書くことが大切です。
例えば、「次の人工授精で妊娠できるかもしれない」「体外受精が怖い」「何をするのかわからず不安」「費用面の不安」「仕事との両立への不安」「そこまでして子どもを望んでいるのかという迷い」など、さまざまな思いが浮かんでくるかもしれません。
不安や踏み出せない理由を整理できると、次の選択肢が見えてくることがあります。
一人で考えるのが難しいときは、クリニックのカウンセラーやコーディネーターに相談してみましょう。体外受精に対する不安が強い場合は、クリニックで開催されている説明会や相談会を利用するのもおすすめです。「知らない、わからない」を減らすことで、不安が和らぐこともあります。

年齢と治療回数から考える
年齢に余裕がある場合は、自分の中でしっかり納得してから次の治療を考えてもいいかもしれません。
一方で、年齢によっては時間的な余裕が少ない場合もあります。体外受精を検討する際の目安のひとつが、年齢とこれまでの治療回数です。
例えば、同じ治療回数であっても、35歳未満と35〜39歳では考え方が異なります。
35歳未満の場合、精液検査やAMHの値に大きな問題がなければ、タイミング法3〜4周期、人工授精3〜4周期を目安に体外受精を検討します1)。
35〜39歳の場合は、タイミング法は行わず、人工授精3〜4周期で体外受精を考える場合もあります。
これはあくまでもひとつの考え方であり、最終的には医師とよく相談したうえで決断することになります。目安として、参考にしてみてください。
なお、35〜39歳の年齢層では、体外受精の妊娠率が年齢とともに低下していくことがデータでも示されています2)。迷っている間にも妊娠率は下がっていくことを、知っておく必要があるでしょう。
最後は自分の気持ちを優先しよう
さまざまな視点で考えたうえで、それでも迷う場合は、「人工授精を続けた先」を具体的に考えてみるのもひとつです。
あと何回人工授精を行えば納得できるのか、いつまで続ければ次の治療を考えられるのか——具体的に考えてみてください。「あと3回」「あと半年」といったゴールを決めることで、終わりの見えない迷いから抜け出しやすくなります。
体外受精へ進むかどうかを決めるのは、ほかでもないあなた自身です。治療が進めば、時間的・精神的・身体的・金銭的な負担が増えることもあります。だからこそ、できるだけ納得した形で決断してほしいと思います。
一人で答えを出すのが難しいときは、医師や看護師、カウンセラーに相談しながら、自分にとって納得できる選択を見つけていきましょう。
参考文献
1)不妊治療のスケジュール In: 黒田恵司. データから考える不妊症・不育症治療. メディカルビュー社.2017年;第1版:106-110
2)公益社団法人日本産婦人科学会 2023年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績https://www.jsog.or.jp/activity/art/2023_JSOG-ART.pdf













