産後は「大丈夫ではない」状態が当たり前
「大丈夫?」「無理していない?」出産後、周りからそんな声をかけてもらうことが増えた方も多いのではないでしょうか。
心配してくれる気持ちがありがたいことは、よくわかっている。それでも、そのたびにうまく答えられなかったり、気持ちが重くなったり。つい「大丈夫です」と元気なふりをしてしまう自分に、疲れてしまうこともあるはずです。
私は、産後という時期は「大丈夫ではない」状態が前提だと考えています。妊娠・出産という大きな出来事を経て、心も体も回復の途中。そのうえで、赤ちゃんのお世話は24時間続きます。
どんなに上手に育児をしているように見える人でも、出産が軽くて元気そうに見える人でも、産後は誰でも、少なからず「大丈夫ではない」状態です。
だからこそ本来は、パートナーやご家族、私たち助産師など周りのサポートが必要なときでもあります。
周りの人が「大丈夫?」と声をかけてくれるのは、あなたのことを気にかけてくれているからこそ。その思いが感じられるからこそ、「ありがたいけれど、つらい」と感じてしまう自分に戸惑っているのかもしれませんね。
気遣いがつらいと感じるあなたは、冷たいのではないと思います。むしろ「これ以上、心配をかけたくない」「迷惑をかけたくない」という相手を思う優しさがあるからこそ、苦しくなっているのではないでしょうか。
また、人に頼ることや弱さを見せることそのものが、私たちにとってとても勇気のいることでもあります。私たちは小さいころから「人に迷惑をかけてはいけない」「自分のことは自分で」と教えられ、自立を大切にする価値観の中で育ってきました。
ずっと頑張ること、ちゃんとすることを重ねてきた人ほど、誰かに助けを求めることに強い抵抗を感じやすいものです。

「大丈夫」と言ってしまう心の内側
私自身、初めての育児のとき、生後2か月の赤ちゃんを実母に預けて外出したことがあります。3時間ほどの用事でしたが、帰宅すると母から「ずっと泣いて大変だった」「哺乳瓶もうまく使えなくて、散々だった」と言われました。
そのとき「こんなことなら、お願いしなければよかった」「迷惑をかけてしまった」という気持ちで胸がいっぱいになり、とても悲しくなりました。
人を頼るには勇気がいります。その勇気のあとにつらい思いをすると、「もう頼らないほうがいいかもしれない」と感じてしまうのも、自然なことなのだと思います。
「大丈夫?」と聞かれて「大丈夫じゃない」と答えてしまったら、本当に大丈夫じゃない自分を直視することになってしまいそうで、それが怖くて答えられないこともあるのではないでしょうか。
産後、寝不足が続き、頼り方もわからず、「大丈夫」「頑張れ」と自分に言い聞かせて踏ん張っているとき。もし「大丈夫じゃない」と口にしたら、張りつめていた気持ちが決壊したようにあふれてしまいそうで……。だから「大丈夫です」と言うのは、元気なふりをしているのではなく、必死に自分を支えている姿なのかもしれません。
気遣いがつらいときは、頑張っているサイン
人からの気遣いがつらく感じるとき、それは今とても頑張っている、一人で抱えているサインなのだと思います。
子育ては、本来一人でできるものではありません。けれど、頼る余裕も頼り方もわからないほど頑張っているときほど、「大丈夫」と言ってしまいやすいものです。
もし「大丈夫?」の声かけがつらく感じたら、「今の私は『手伝って』とも言えないくらい、頑張っているんだな」と、まずは自分に向けてそう思ってあげてください。
そしてもし「誰かに少し頼って、自分を楽にしてあげたいな」と感じたときには、産後ケアや訪問ケアなどのサービスを使ったり、親しい方に本当に小さなことを話してみてください。
「抱っこを代わってもらえると助かる」「少し話を聞いてほしい」、それくらいのことで十分です。
産後は「どう頼ればいいか」を自分自身も探している途中のときです。わからないまま、うまくできないままで、いいのです。
今は「大丈夫じゃなくていい」とき。支えを受け取りながら、少しずつあなたらしい呼吸ができる時間が増えていくことを、心から願っています。


















