ずっと一緒だと苦しくなるのは、自然なこと
赤ちゃんが生まれると、生活のスタイルは大きく変わります。予測ができない毎日の中で、子育ては24時間、休みなく続いていきます。
小さな赤ちゃんは、自分では何もすることができず、生活のすべてを親や養育者にゆだねて生きています。その分、お母さんは一日中、無意識のうちにも赤ちゃんのことを気にかけながら過ごしているのではないでしょうか。
産後ケアで出会うお母さんたちは、よくこんなふうに話してくれます。「赤ちゃんが泣いていると、『どうしたのかな?早く泣き止ませなきゃ』とおむつを替えたり、抱っこをしたり。静かに眠っているときでさえ、『ちゃんと息をしているのかな』と心配になってしまう」と。赤ちゃんを大切に思うからこそ、心も体も休まらないのです。
助産師として日々お母さんたちと接する中で、そんな思いを抱えながら過ごしている方が、本当に多いと感じています。
産後は特に、授乳のために夜の睡眠が途切れがちになります。また、妊娠や出産を経た体は、まだ産後の生活に慣れていく途中です。産後の体には、普段以上の「休息」が必要なのです。それなのに、子育ては24時間、毎日続きます。
そんな状況の中で「一人になりたい」と感じるのは、赤ちゃんのことが嫌だからでも、愛情が足りないからでもありません。もちろん、あなたの心が弱いからでもありません。
それは「一人になって、ゆっくり自分を整える時間が必要」だという、心と体からのサインなのではないでしょうか。「一人になりたい」と感じる自分を、どうか責めないであげてください。

ヒトは、本来「一人で子育てをし続ける」ようにはできていません
「母親なのだから、子どものそばにずっといなければならない」そうした考え方が身近にある社会の中で子育てをしていれば、そう感じてしまうのも無理のないことだと思います。
一方で、人類学の分野では、人類は太古の昔から一人で子育てをするのではなく、周囲と支え合いながら育児をしてきたのではないかと考えられています。いわゆる「共同養育」という考え方です。
ヒトの赤ちゃんは、サルやチンパンジーの赤ちゃんのように、お母さんの体に自分でしがみつくことができません。そのため、ヒトのお母さんは赤ちゃんをずっと抱っこしている必要がありますが、両手がふさがってしまうと、一人で子育てを続けることはとても大変になります。
発達心理学者の明和政子さんは、自身の著書で「お母さんは赤ちゃんを産みますが、ヒトの母親の役割は『産む』ところに比重がおかれていて、産んだあとは、所属集団のメンバーとともに子どもを育てたと考えられています。人は共同養育しながら生きてきた生物なのです。」と述べています1)。
こうした視点から見ると、私たちが一人で24時間子育てを担い続けることが、どれほど負担の大きいことか、少し想像しやすくなるのではないでしょうか。
「誰かを頼ってもいい」と思えたときに
もし「誰かを頼ってもいいのかもしれない」と少しでも思えたなら、家族や信頼できる友人にお願いして、赤ちゃんをほんの短い時間預かってもらい、自分を休める時間をつくってみませんか。
お家でゆっくり過ごしたいのであれば、赤ちゃんを1~2時間ほど外に連れ出してもらうのもひとつの方法です。反対に、自分一人で外に出かけるのも、よい気分転換になります。
産後ケアを利用して、産後ケア施設でゆっくり過ごしたり、訪問助産師に家に来てもらうのも安心できる選択肢です。お子さんの月齢によっては、保育所や子育て支援施設の一時預かりを利用できる場合もあります。
そこまで本格的に赤ちゃんと離れなくても、赤ちゃんがぐっすり眠っているときに、安全を確保したうえでベランダに出て深呼吸をする。好きな映画や本の世界に少しだけ没頭する。それだけでも、気持ちがふっと軽くなることがあります。赤ちゃんと、24時間ずっと一緒に過ごさなくてもいいのです。
ここまで、本当によく頑張ってきましたね。まずは、今までの自分自身に「ありがとう」と「お疲れさま」の気持ちを送ってあげてください。
あなたが「お母さん」である前に、「あなた自身」としてほっとできる時間が、日々の中にありますように。
参考文献
1.明和政子. 人類の育児スタイルは共同養育. NPOブックスタート; 2022.

















