比べてしまうのは、とても自然なこと
「育児について調べれば調べるほど、不安になる」「SNSを見るたびに、比べて落ち込んでしまう」、これは産後ケアの場でも本当によく聞く言葉です。「『ちゃんと育てなきゃ』と思えば思うほど気持ちが苦しくなる」という思いを抱えながら赤ちゃんと向き合っている方はたくさんいらっしゃいます。
誰かと比べてしまうのは、実はとても自然なことです。比べる力は、環境を判断したり、危険を避けたり、よりよく生きようとするために人間に備わっているものだと言われています。育児の中で誰かと比べてしまうのも、赤ちゃんと少しでもよい関わりをしたい、赤ちゃんにとって安心できる環境を整えたいという思いがあるからこそなのかもしれません。
ただ、責任感が強くて真面目な方ほど、比べることで自分はできていないと感じやすく、苦しさを抱えやすいように思います。
特にSNSは要注意です。投稿されているのはその人の生活のすべてではなく、うまくいった場面やきれいに切り取られた一瞬がほとんどです。けれど「ちゃんとしなきゃ」という気持ちで見ていると、誰かのできているところと自分のできていないところを並べてしまいがちです。
頭ではわかっていても、自分の心がついていかないこともありますよね。
「正解はない」と言われて、余計に困ってしまうとき
世の中には「子育てに正解はない」「答えは目の前の子の中にある」といった言葉があふれています。でも私は、その言葉がかえってお母さんを戸惑わせたり、追い詰めたりしてしまうこともあると感じています。
産後ケアの場でも「正解がないなら、何を頼りにしたらいいの?」「わが子の中に答えがあると言われてもわからない」という声をよく聞きます。さらに、SNSやネットには情報があふれていて、何を信じたらいいのかわからないという苦しさも重なります。迷いや不安を感じるのは、とても自然なことだと思います。

たとえば離乳食を例に考えてみましょう。SNSで生後6か月の赤ちゃんがもりもり食べている様子を見たあと、目の前のわが子がお粥を口から出しているのを見ると、「作り方が悪いのかな」「発達が遅れているのかな」と不安になりますよね。そんな相談をよく受けます。
そのようなとき私は、食べる・飲み込むための口の動きや、舌やのどの発達についてお伝えしながら、今この子が育ちのどのあたりにいるのかをお母さんと一緒に見ていきます。すると「この子はまだ舌で押し出す時期なんだ」「今はこのペースでいいんだ」と、その子自身の育ちが見えてきます。つまり、大切なのは、“SNSで投稿されているあの子”と同じようにすることではなく、“目の前のわが子”に合った進め方を問い続けていくことなのだと思います。
子育ての悩みは、体のこと、心のこと、環境のこと、その子の個性など、たくさんの要素が絡み合っています。「こうしたら、こうなる」というひとつの正解があるわけではありません。だからこそ、「どう育てるか」という正解を探すより、「この子とどんな道を歩みたいか」を見つけていくことが大切なのではないでしょうか。
悩んだり、迷ったり、考えたりしながら選んでいく。その過程そのものが、もうすでにちゃんと子育てしていることなのだと思います。
迷いながら歩む時間も、親子の大切な一歩
子育てをしていると、はっきりした答えが見えなくて、立ち止まったり迷ったりする時間もたくさんあるでしょう。
でも、すぐに答えが出なくても大丈夫です。迷いながら考えているその時間も、親子の歩みのひとつです。あなたがその都度立ち止まり、考え、選んできた一歩一歩が、親子のかけがえのない時間になっていくのですから。
だからこそ、わからなくて戸惑っている自分の気持ちも、そっと大切にしてあげてくださいね。



















