職場やパートナーに支えられ、「みんなで」歩んだ不妊治療の道のり(後編)

不妊治療を始める前の、“プレ妊活”状態で知っておきたかったこと。33歳で結婚し、はじめは仕事と両立しながら自然妊娠を目指した女性に、その後の不妊治療の実際の体験について聞きました。

職場やパートナーに支えられ、「みんなで」歩んだ不妊治療の道のり(後編)

最終更新日:
2026-03-30
公開日:
2026-03-30

不妊治療をはじめる時、ほとんどがその“初心者”です。この難しいはじめての経験に向き合っていると、クリニックでの治療でもなく、友達からの励ましでもなく「私の場合はこうだった」「前にこれを知っていることができたら」という経験者のリアルなアドバイスが欲しい瞬間があるはずです。名前は仮名、顔も明かさないからこそ話せる、一足先に不妊治療をした方からのタイムカプセルのような経験談。全てが当てはまらなくても、不妊治療をはじめる前、あるいは真っ只中のひとつのガイドに役立ててください。

vol.5でご登場いただくのは、34歳から36歳まで不妊治療を行い、女の子を妊娠 ・出産したEさん。仕事や育児にひたむきに取り組む誠実な女性です。前編では、アプリを使った妊活や、不妊治療中の検査と手術、そして、仕事と不妊治療の両立についてお話しいただきました。後編では、治療方針の決定と体外受精の実施、その後の妊娠期間から出産までのお話を聞きます。

予算の範囲内で治療方針を定め、体外受精に臨む

Eさんは大学病院での手術や検査を終え、自宅近くの不妊治療専門クリニックに戻り、いよいよ本格的な治療を開始します。

「単角子宮との診断結果から、『少しでも妊娠の可能性が高まるように、体外受精(胚盤胞移植)で治療を進めていきましょう』と、医師からお話がありました。同時に、採卵や移植を行う際の先進医療について説明があり、私の体の状態に合わせて効果が見込めそうな処置をいくつか提案いただきました。

私はパートナーとあらかじめ不妊治療の予算を決めていたので、IMSI(イムジー)(※)や、SEET(シート)法(※)など、予算内でできることは可能な限り取り入れてみることにしました」

医師やパートナーと相談のうえ、治療方針を定めたEさん。体外受精はどのように進んだのでしょうか。

「採卵に向け、数日前から排卵誘発剤の内服薬や点鼻薬、自己注射を打って準備を進め、当日は局所麻酔をしたうえで採卵を行いました。採取した11個の卵子のうち、成熟卵は2個。そして、培養を経て胚盤胞に育ったのは1個だけでした。

想像していたよりも数が少なく、また、採卵後に強い痛みを感じたため、『もう一度、採卵することになったらどうしよう』と心配しましたが、1個でもあれば妊娠に至る可能性は0ではないと気持ちを切り替え、移植に臨みました」

採卵の翌月に移植を予定していたEさんですが、ちょうど仕事の繁忙期が重なって体調を崩してしまい、移植はさらにひと月先へ見送ることになりました。

「仕事が忙しくなることはあらかじめわかっていたものの、これ以上、先延ばしになるようであれば今度こそ退職して不妊治療に専念しようと考えていました。そうならないために、移植に向けて少しでも子宮の環境を整えておきたく、葉酸サプリを飲んでみたり、湯船に浸かって体を冷やさないようにしたりするなど、自分なりにケアをして準備しました」

※IMSI(イムジー)は、 従来よりも高い倍率の顕微鏡を用いて精子を観察する技術。より質の高い精子を選別することが可能となり、受精率や着床率の向上が期待される先進医療。

※SEET(シート)法とは、体外で培養した受精卵の培養液を凍結・融解し、移植する数日前に子宮内に注入する技術。子宮内膜を着床しやすい状態に整え、妊娠率の向上を図る先進医療。

★医師からのアドバイスをもとに、予算内でいくつかの先進医療を取り入れてみた。治療方針については、医師やパートナーとあらかじめ相談しておくと安心。

★疲労から体調を崩し、移植が先延ばしになってしまった。不妊治療中はセルフケアも大切に。

絶対に無理はしない。自分と赤ちゃんを第一に過ごした妊娠期間

採卵から2ヶ月後に移植を行ったEさん。後日、無事に妊娠を確認できましたが、単角子宮の場合は流産や早産のリスクが高い傾向にあるとされるため、妊娠期間中も油断ならない状況でした。そして、妊娠10週目に思いもよらない出来事が起こります。

「大学病院での検診を受けた日の夜、入浴中に大量出血してしまったのです。湯船が真っ赤に染まり、7cmほどの血の塊も出て、流産したのかと気が動転して急いで病院に向かいました。

念のため、排出された血の塊を持ち込み、救急外来で検査を受けたところ、『出血の原因は分からないけれど、胎盤など赤ちゃんに関連するものではない』と医師から説明があり、あわせて超音波検査をするとお腹の赤ちゃんは元気に動いていました。

赤ちゃんの無事は確認できましたが、あまりの衝撃的な出来事に、その後も出血した場面が何度もフラッシュバックしてしまい、とても辛かったです。当時はちょうどつわりもはじまった時期で、心身ともにかなり疲弊していました。そして、医師に相談のうえ、職場に母健連絡カード(※)を提出し、数ヶ月間、休職することにしました」

安定期に入ってからも安心はできなかったと語るEさん。休職期間を経て職場に復帰する際には、心に決めたことがあったようです。

「仕事を再開するにあたり、『絶対に無理はしない』と誓いました。職場の上司からも、『お腹の赤ちゃんの母親になれるのはあなただけなのだから、あなた自身がしっかりと自分の体調を見極めて、休むべきときは休みなさい』と言われました。

仕事を休むとなると、どうしても『周りに迷惑をかけてしまうのでは』と、申し訳ない気持ちになってしまいますが、上司の言葉の通り、赤ちゃんを守れるのは自分だけだと言い聞かせ、心身をより労わるようになりました」

※母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)とは、妊産婦である女性労働者が、主治医等による指導事項の内容を事業主へ的確に伝えるための書類。事業主はカードの記載内容に応じ、通勤緩和や休業などの適切な措置を講じる必要がある。

★安定期に入っても無理は禁物。自分と赤ちゃんを第一優先に、心身を休めることを忘れずに。

波瀾万丈の不妊治療を乗り越え、やっと会えた愛しい我が子

早産や流産のリスクから、Eさんは細心の注意を払って妊娠期間を過ごしました。そして、いよいよ出産予定日を迎えます。

「妊娠40週が経過しても出産の兆候がなかったため、予定日の翌日に病院へ行きました。NST(ノンストレステスト)(※)の結果、即日入院が決定。さらに翌日のお昼ごろから陣痛促進剤を打ち、すぐに産気づいてそのまま数時間で出産しました。

想像していたより出産には時間がかからなかったのですが、出産時に出てくるはずの胎盤が癒着してしまい、その後の処置が大変でした。多くの先生のお力を借りながら、なんとか胎盤を取り出すことに成功したものの、出産後に強い痛みが続いたり、退院する直前まで抗生剤を投与し続けなければならなかったりと、私の妊娠・出産は最後の最後まで波瀾万丈でした。

とはいえ、ようやく会えた我が子の愛おしさは、なにものにも代えられない幸福です。どんなときも寄り添い続けてくれたパートナーも、生まれた子どもを見て喜びの涙を流していました」

職場の方々やパートナー、医師とともに協力しながら不妊治療を乗り越えてきたEさん。最後に、「不妊治療に取り組む人たちへ伝えたいこと」を伺いました。

「ひとつは、妊娠する難しさを知ってほしいです。当初の私は、『妊活をすれば、すぐに子どもはできるだろう』と楽観的に捉えていたため、本格的に不妊治療に取り組むまでに時間がかかってしまいました。年齢に関わらず人それぞれ体質は異なるので、まずは自分の体の状態を確認するためにも、不妊治療専門クリニックで検査を受けてみることをおすすめします。

もうひとつは、仕事と不妊治療の両立です。最近では、私と同じように働きながら不妊治療をする方が多いと思います。職場で個人的な事情を打ち明けるのは勇気がいることですし、もちろん無理に周知する必要はありません。しかし、職場からの理解を得られれば、通院のための休みが取りやすくなるなど、よりスムーズに心地よく不妊治療を進めることができます。仕事と不妊治療の両立が難しいときは、一度相談してみて、どのような働き方の調整が可能かを確認してみるのもひとつの方法だと思います。

ひとりで悩みを抱え込まず、身近な人たちに協力を仰ぎながら、みんなで手を取り合って不妊治療に臨んでみてください」

※NST(ノンストレステスト)検査とは、子宮収縮の度合いや胎児の心拍数の変化などから、胎児の健康状態を確認する出生前検査。

★妊娠する難しさを知ってほしい。年齢に関わらず、まずは自分の体の状態を確認するための検査を。

★仕事と不妊治療の両立には、職場からの理解を得ることも大切。相手の出方を伺う意味でも、試しに相談をしてみるのがおすすめ。

取材/ 出川 光 文/日比 佳代子

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