産後、生理不順になって不安を感じている方もいるでしょう。出産後はホルモンバランスの変化や授乳の影響によって、月経周期の乱れや無月経が続くケースも少なくありません。
この記事では、産後に生理が不規則になりやすい理由やセルフケア、受診すべきサインなどを解説します。
産後に生理が再開する時期はいつ頃?
産後の生理が再開する時期は、「授乳の有無や頻度」により異なります。
ミルク育児では、産後2か月程度で生理が再開する場合が多いです。一方母乳育児では、産後数か月~1年前後と幅があり、生理が再開するまで1年以上かかることもあるとされています1)。
母乳を与えているかどうかで開きがあるのは、「プロラクチン」と呼ばれるホルモンの影響です。プロラクチンは乳汁分泌を促すホルモンで、妊娠中や授乳中は非妊娠時より増加する特徴があります。また、排卵を抑える作用もあるため、授乳をしていると生理再開が遅れたり生理の周期が不規則になることがあります。
ミルク育児の方の場合、プロラクチン濃度は産後20〜30日頃に正常化します。それに伴いエストロゲンなどのホルモン分泌が回復し、排卵を伴う月経周期が戻ってきます。
母乳育児の場合、プロラクチン濃度が高いため、授乳をしていない方と比べて生理の再開が遅くなる傾向にあります。
産後に生理不順が起きる原因
産後は、生理の再開時期に個人差が大きいのと同様に、周期もすぐには安定しません。妊娠・出産によるさまざまな体の変化が影響しているためです。原因をひとつずつ見ていきましょう。
ホルモンバランスの変動
生理周期は、ホルモンバランスが大きく関係します。女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンは、妊娠中に分泌量が増加し、産後は急激に低下します2)。産後はまだホルモンバランスが不安定なため、生理周期の乱れにつながりやすくなるのです。
また、慣れない生活によるストレスも要因となることもあります。脳はストレスを感じると、ストレスホルモンが分泌されます。代表的なストレスホルモンは「コルチゾール」です3)。コルチゾールの分泌が過剰になると生理不順だけでなく、体調や睡眠に影響がでることがあります。
プロラクチンの影響
産後は、「プロラクチン」が増加します。プロラクチンは、母乳の分泌を促すホルモンですが、排卵抑制作用があるため生理周期が安定しなくなることがあります。
授乳をしている方は、生理の再開が遅くなることに加え、排卵が起こらなかったり生理周期が不規則になったりする場合もあります。
栄養不足や睡眠不足
育児や家事などにより、ライフスタイルは大きく変わります。食事や睡眠が不十分になり、ホルモンバランスが乱れ、生理不順を招くケースも少なくありません。
必要な栄養が摂れないとホルモンバランスに悪影響を与えることがあります。育児をしながらだと大変なこともありますが、できる範囲で食事の内容やタイミングを整えられるとよいでしょう。
また産後は、授乳や夜泣きに対応するため、睡眠が細切れになったり不足したりします。食事のタイミングが不規則になると、体内時計の乱れにつながり、睡眠の質の低下を招きます。こうした要因が重なり、生理が不安定になることがあります。
子宮が回復(子宮復古)していない
産後に生理不順になるのは、子宮復古がうまくいかないことも原因のひとつに挙げられます。妊娠すると女性の子宮は出産まで大きくなり、産後は6〜8週間で妊娠前の状態に戻るのが一般的です。しかし、何らかの原因で子宮の収縮が遅れると、生理周期の乱れにつながります4)。
悪露(おろ)の量が減らない、腹痛がある、嫌なにおいがあるといった場合は、産婦人科を受診するようにしましょう。
妊娠の可能性
産後、長期間生理がこない場合は、妊娠の可能性もあります。産後は妊娠しにくいと思われがちですが、排卵が起きていれば妊娠する場合もあるのです。
次の妊娠までに期間をあけたい場合は、産後初めての性交渉のときから避妊しましょう。次のお子さんを望む場合は、パートナーと話し合い、計画を立てておくこと安心です。
産後の生理を安定させるセルフケア
産後は、さまざまな要因で生理周期が乱れやすいです。産後に生理を安定させるために、以下のポイントを押さえて実践してみましょう。
栄養摂取と睡眠時間の確保
栄養不足や睡眠不足は、ホルモンバランスが乱れる原因となります。栄養バランスのとれた食事や、睡眠時間の確保を意識しましょう。
厚生労働省の調査によると、母乳育児をしている方は、エネルギーやたんぱく質、ビタミンやミネラルが不足しやすいことがわかっています5)。主食・主菜・副菜の3つがそろった食事にすることが大切です。また、乳製品や小魚などでカルシウムも補いましょう。以下を参考にメニューを考えてみてください。
主食:ごはん・パン・麺類
主菜:肉・魚・卵・大豆および大豆製品
副菜:野菜・いも・豆類・きのこ・海藻
ストレスを溜めない
ホルモンバランスを整えるためには、ストレスを溜めないことが大切です。育児中は自分の時間を持つのが難しく、ストレスを解消しにくくなりますが、できるだけ時間を作り、リラックスを意識しましょう。
自宅でできる軽いストレッチやウォーキングなどから始めてみてください。適度な運動はリフレッシュ効果が期待できるだけでなく、ホルモンバランスを整えやすくします。全身の血流も促され、健康維持にも役立ちます。
医療機関を受診する
生活習慣を整え、ストレスを溜めない生活を送っていたとしても、生理周期が安定しないこともあります。セルフケアで改善しないときは、医療機関を受診するのもひとつの方法です。
生理周期が乱れている原因や健康状態をチェックして、必要に応じて月経周期の調整や避妊をかねてお薬の処方が検討されることもあります。
ただし、母乳栄養が主体の場合におけるピルの内服は、産後6か月以降の服用が推奨されています。また、ミルク育児をしている方に対しては、静脈血栓症のリスクを考慮して判断されます。一方でプロゲスチン単剤のお薬など、授乳中でも検討しやすい選択肢もあります。
産後の生理不順についてよくある質問
産後の生理周期は、再開時期や安定する時期の個人差が大きいです。産後の生理周期について、よくある質問とその回答をまとめました。
Q:産後は生理不順になりやすい?
産後はホルモンの変化などにより、生理不順になりやすいです。 ホルモンバランスの急激な変化や、育児による疲労やストレスも重なり排卵のタイミングが不定期になることがあります。
Q:出産後の生理不順はいつまで?
出産後の生理不順は、授乳状況によって産後2か月〜1年程度の幅があります。ミルク育児の方は産後3か月程度経っても生理が来ない場合、母乳育児の方は断乳後6か月以上経っても生理が来ない場合は、産婦人科を受診しましょう。
Q:産後の生理が遅れる原因は何ですか?
生理が遅れる原因はホルモンバランスの変化、育児による生活リズムの大きな変化によるストレスなどが挙げられます。排卵があれば、産後の生理が再開していなくても妊娠する可能性があるため、次の妊娠まで間隔をあけたい場合は、避妊する必要があります。
Q:産後の生理に前兆はある?
生理のタイミングを知るために、基礎体温を測定するとよいでしょう。基礎体温は、通常高温期と低温期の二相性を示します。月経が始まるのは、高温期から低温期に切り替わるタイミングです。日頃から測定値を把握しておくと、生理の予測がつきやすくなります。
加えて、下腹部痛や腰痛、イライラ感、胸の張りなどが前兆として現れることもあります。基礎体温の測定は、女性ホルモンの状態や肌トラブルの周期を予想するのにも役立つでしょう。
産後の生理周期が安定しない場合は産婦人科を受診しましょう
産後の生理周期は、ホルモンバランスや生活環境の変化によるストレスなどの要因により変動しやすくなります。なかなか周期が安定しないこともあるかもしれません。生理再開後も長期間周期が安定しない、異常な出血が続くなどの場合は、病気が関わっている可能性もあります。気になる変化が見られるときは、早めに産婦人科を受診するようにしましょう。
参考文献
1)杉野 法広. 分娩の生理・産褥の生理. 日産婦誌. 2007;59(10):640–641.
https://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/59/10/KJ00005050091.pdf
2)渋井 佳代. 女性の睡眠とホルモン. バイオメカニズム学会誌. 2005;29(4):205-209.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/29/4/29_4_205/_pdf
3)日本産科婦人科医会.2.ストレスホルモン.研修ノート No. 107 災害時における周産期医療.東京:日本産科婦人科医会
4)牧野田 知, 富澤 英樹. 産褥異常の管理と治療. 日産婦誌. 2009;61(12):N-632-N-635.
https://fa.kyorin.co.jp/jsog/readPDF.php?file=to63/61/12/KJ00005928823.pdf
5)厚生労働省. 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針〜妊娠前から、健康なからだづくりを〜解説要領. 令和3年3月






